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素直な感情を伝えてくれる柚瑠木さんに、私もきちんと応えてあげたいんです。だけど、さっきから柚瑠木さんを男性として強く意識させられてしまうようになっていて……
この距離だからこそ分かる、柚瑠木さんの微かなシトラス系の香り。私の髪を梳く細く長い指、そして私の全てを包んでしまう事の出来る広い胸と頼りがいのある力強い腕も。
今まで以上に柚瑠木さんの事で頭がいっぱいになってしまうんです。このままでは、彼の事だけしか見えなくなってしまいそうで。
本当は少しだけ柚瑠木さんに甘えてみたい、そう思っているのに……
「柚瑠木さん、私は……」
【ピロリン、ピロリン……】
こんなタイミングでポケットに入れておいた私のスマホが鳴って……柚瑠木さんは小さな溜息の後、私を抱きしめている腕の力を緩めました。
「こんな時間に誰からですか?」
少しだけ拗ねた様子の柚瑠木さんに聞かれて、私は急いで画面をタップしました。電話をかけてきたのはさっきまで慰めてくれていた香津美さんだったのですが……
『月菜さん、柚瑠木さんをきつく叱っておいて頂戴!彼が聖壱さんに余計な事を言ったせいで、私は……!』
電話の向こう、香津美さんはとても焦っているようです。旦那さんの聖壱さんと揉めているのでしょうか?
香津美さんがこんなに怒るなんて、柚瑠木さんは聖壱さんにいったい何を言ったのですか?
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