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「月菜さん、今夜も抱きしめさせて……」
いつもの時間、いつもと同じ台詞のはずなのに……今日は何だか心がそわそわしてしまいます。そっと背中に回された柚瑠木さんの腕の力が、いつもとは少し違う気がして。
「……もしかして、緊張していますか?僕がさっき、貴女にあんな事を言ったから。」
緊張で身体に力が入ってしまっている事が、柚瑠木さんにバレてしまったようです。こういう事には鋭いんですね、柚瑠木さんは。
「はい、少しだけ……」
柚瑠木さんの問いかけに素直に返事をすると、頭上から「フフッ」と小さな笑い声が聞こえたような気がしたんです。
「……柚瑠木さん、ひょっとして私の事を笑いましたか?」
私はまだ柚瑠木さんの笑ったところを見せてもらったことがありません。もし彼がまだ笑っているのならばその顔が見たい、そう思って顔を上げようとしたんです。
それなのに柚瑠木さんはそれを阻止するかのように、私のおでこに優しくキスをしてきて……
「いいえ、僕は月菜さんの事を笑ってなんかいませんよ。さあ、もう休みましょう。」
なんだか柚瑠木さんに上手く誤魔化されてしまいました。
ですが柚瑠木さんが本当の笑顔を私に見せてくれる……そんな日が近いうちに来るような気がして、温かい気持ちで眠りにつく事が出来ました。
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