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「僕に甘えてみせてください、なんて……私はどうすればいいのでしょうか?」
少しだけ強引だった昨日の柚瑠木さんを思い出すと、また胸がドキドキしてきます。あんな風に男性に迫られた経験の無い私は、彼の言動に戸惑いながらもときめく胸を止めることが出来なくて……
私は柚瑠木さんに今まで知らなかった色んな感情を引き出されている気がします。彼と結婚していなければ、こんな胸の高鳴りも……誰かを愛おしいと思う気持ちも、ずっと分からないままだったのかもしれません。
もうお昼も過ぎたというのに、昨日の事を思い出してぼんやりとした時間を過ごしていたその時……テーブルに置いたままだったスマホが「ピコン」と鳴りました。
私はソファーから立ち上がり、スマホに届いたメッセージを確認すると……
『私ね、ショッピングモール内の和喫茶にいるの。今から会えないかしら?』
メッセージの送り主は香津美さんでした。私は昨日柚瑠木さんと仲直り出来たことを伝えられないままでしたし、香津美さんの電話の様子も気になっていたので「すぐ行きます」と返事を送りました。
急いで支度をしてショッピングモール内の和喫茶へ。ここはヒルズビレッジのテナントの中でも人気のお店で、落ち着いた和の雰囲気に癒されながらとても美味しいお茶やお菓子を楽しめるお店なんです。
「すみません、遅くなってしまって……!」
和喫茶の奥の席に座っていた香津美さんは、なぜか少し気だるげな雰囲気で……もしかしてどこか体調でも悪いのでしょうか?
「いいのよ、来てくれてありがとう。」
彼女の様子が気になりながらも私がぺこりと頭を下げると、香津美さんはそう言って微笑んでくれました。
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