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「……そう。こっちには余計な事をしたくせに自分達だけちゃっかりと仲直りしたのね、あの男は。」
何故なんでしょうか、微笑んでるはずの香津美さんの顔がまるで般若の様に見えるんです。私は昨日の香津美さんからの電話を思い出し、彼女が怒っている理由が柚瑠木さんなのではないかと気付きました。
夫のしたことは妻の私にも責任があるはず、そう思って香津美さんに謝ろうとしたのですが……
「言っておくけれど、これは月菜さんの所為ではないからね。それに……どうせ謝らせるのならば、あの冷徹男に謝罪させた方がずっと面白いでしょうしね。」
あの柚瑠木さんに謝らせようというのですか?それを楽しむなんて、やはり香津美さんも怒らせると相当怖い女性の様です。
その場面を想像したのでしょうか?香津美さんが「ふふん」と笑って肩の髪をはらったその時、彼女の首筋にいくつもの赤い痕があったので思わず……
「大変です、香津美さん。首にたくさんの虫刺されが……!」
そう言って、手を伸ばしかけました。だけど、香津美さんは慌てて首筋を長い髪で隠してしまったんです。不思議に思って香津美さんを見ると、彼女は頬を赤く染めていて……
「いいのよ、これは。月菜さんは気にしなくていい事だから。」
赤面する香津美さんと彼女の首筋にあるいくつもの赤い痕。そして、あの時気まずそうに話を誤魔化した柚瑠木さん。
鈍い私でもやっとソレがなんなのか、理解することが出来て……
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