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お箸を見た柚瑠木さんは私を見て何か考えていたようですが、すぐに目を細めて……
「月菜さん、僕と貴女は契約結婚です。ですから僕は貴女と仲良し夫婦ごっこをするつもりはないんです。これから先もずっとそうだと思っていてください。」
そう言うと柚瑠木さんは私から離れて、他の和食器を見始めました。
でも柚瑠木さんは悪くありません。この結婚が契約結婚だという事を、ちゃんと理解出来ていなかった私が悪いんです。
それでも私は身体その場所からなかなか動かすことが出来なくて……柚瑠木さんに迷惑をかけたくない、早くここから離れないと彼に気を使わせてしまうかもしれない。
そう思った時、他のお客さんがその夫婦箸を手に取ろうとしたんです。
「すみません、この商品は僕の妻が選んだものですから。」
柚瑠木さんはその夫婦箸を持ってそのまま会計へ。彼の行動はいったいどういう事なんでしょうか?
柚瑠木さんが会計を終えるまでただ見ている事しか出来ない私。
「あの、柚瑠木さん。さっきは……」
会計を終えた柚瑠木さんに近付き謝ろうとすると、彼からスッと商品の入った紙袋を差し出される。
「僕はこの箸のデザインが気に入っただけ、それだけですから。」
涙が出るかと思いました。柚瑠木さんにとってはそうだったとしても、私はとても嬉しかったです。
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