契約結婚の後一つの理由?

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 それでもこんな状態の柚瑠木(ゆるぎ)さんを放っておくことも出来ず、何度も彼に「私はここにいます」と言い続けました。今、柚瑠木さんの一番傍にいるのは【ますみさん】ではなく……貴方の妻である【月菜(つきな)】です、それではいけませんか? 「柚瑠木さん、私は絶対貴方から離れたりしませんから……」  今の自分に出来ることの少なさに歯がゆさを感じながらも、柚瑠木さんの事を必死で抱きしめて。そうしているうちに、柚瑠木さんの呼吸も落ち着いて来て…… 「つき……な、さん?」  柚瑠木さんは目を覚まし、きょろりと周りを見渡しました。彼はさっきよりも落ち着いているようで、私はホッとして身体の力が抜けてしまいした。  そんな私の頬に手を添えた柚瑠木さん、なぜそんな心配そうな顔を……? 「どうして、月菜さんが泣いているのですか?」  その言葉にハッとして自分の頬に触れると、彼の言う通り涙で濡れていて。もしかしたら柚瑠木さんには私よりもずっと大切な人がいるのかもしれない、そう思ったら胸が苦しくてしょうがなくなっていたんです。   「月菜さん、辛いことがあるのならちゃんと話してください。僕は貴女の夫ですよ?」  そんな優しい柚瑠木さんの言葉にも、今は上手く甘えることが出来なくて…… 「……いえ、これは何でもない事ですから。私も寝ますので、柚瑠木さんも寝直してください。」  言えません、だってまだ聞く勇気が無いんです。ますみさんの事も……私が本当に柚瑠木さんの特別でいいのかという事も。胸の奥に痛みを誤魔化すように、私はギュッと目を瞑りました。
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