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静かになったリビングで、2人分の食べかけの夕食を一人で片付けて……先にお風呂を済ませて自室のベットで身体を休めようとしました。
ですが独りぼっちで冷たいシーツの感触を味わうと、自然に涙が零れてしまって。
いつの間にか柚瑠木さんの二人で眠る事に、私を抱きしめてくれる彼の温もりに慣れてしまっていたのだと痛感しました。
『月菜さんは少しずつ強くなっていくんですね』
いつかの柚瑠木さんの言葉が頭を過ぎって、私は目を瞑りギュッと手を握りしめました。本当に私が強くなっているのだったら……
「そうだったら、こんなに…っく、泣かなくて…ひっく……いいはずなのに……ぅっ、うう……」
彼と結婚しこの【ラピスヒルズビレッジ】に越してきて、こんなに思いきり声を出して泣いたのは初めてでした。それくらい今日、柚瑠木さんに拒絶されたことが辛くて。私はそのまま泣き疲れて眠りにつきました。
『あ……って、いか……で……ます……ん……う、ああっ……』
寝室から聞こえてくる柚瑠木さんの魘されている声で目を覚ましました。今日の彼はいつもよりもずっと苦しそうで……
『お……い、だから……なさ…ん……』
柚瑠木さんを想って泣いた瞳はまだジンジンと痛みます。彼の事を好きでいる限りきっとまた泣く事もあるはず。だけど……やはり私は柚瑠木さんの事をこのまま放っておくことなんて出来ないんです。
「これくらいで諦めちゃ駄目です、私は彼の妻なんですから。」
いつものように柚瑠木さんの傍にいて触れてあげることは出来ません。ですが私は彼の唸り声が聞こえなくなるまでずっと柚瑠木さんとのこれからの事だけを考えていました。
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