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「君は杏凛の傍にいてやってくれないか?」
匡介さんは杏凛さんを車の後部座席に乗せると、私にその隣に乗るように言ってきました。私はすぐに頷き杏凛さんの隣に座ると、苦しそうな彼女の手を握りました。
慣れた様子の匡介さんを見ると、杏凜さんがこういう状態になるのは初めての事ではないのかもしれません。ですが私の手を握り返してきた杏凛さんの手の力は強く、私は彼女の事が心配でたまりませんでした。
「もう少しで病院だ、先生には連絡をしているからすぐに診てもらえる。杏凜は何も心配しなくていい。」
匡介さんがそう言うと、杏凜さんは小さく頷いて。上手く甘えられないと言っていた杏凛さんですが、2人はちゃんと通じ合っているように見えて……
そんな事を考えると車は小さな個人病院の駐車場へ。匡介さんは車を止めてエンジンを切ると、すぐに後部座席のドアを開けて杏凛さんを抱き上げました。ですが杏凛さんの手は私の手を握ったままで。
「すまない、病院の中までついて来てもらっていいか?杏凜が君の手を離せないみたいだから。」
匡介さんにそう言われて、私は車を降りて2人についていきました。私に力になれることがあれば、何でもしたかったんです。それで杏凛さんの苦しみが少しでもまぎれるのならば。
小さな病院のベット上、杏凜さんは静かに眠っています。さっきまで苦しんでいたのが嘘のように。匡介さんと私は黙ってその様子を見ているのですが……
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