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学校に通えないでいた柚瑠木さんを、そうやってクラスメイトの子が何度も誘いに来てくれたそうです。もちろん彼の幼馴染の聖壱さんも、そのうちの一人で。
「クラスメイトから渡された発表会のプリントなんて、いつもだったらすぐに捨ててしまうのに……その日、僕はそれを真澄さんに渡したんです。」
「……もしかして、迷っていたのですか?」
真澄さんに連れられて外の世界を知っていくうちに、柚瑠木さんの心にも色んな変化があったはず。それならば、今まで参加する事の出来なかった学校行事にも興味が出たのかもしれないと思ったんです。
「そうです。僕はあの時、少しだけならば発表会に参加出来るかもしれない。そんな僕の背中を真澄さんなら押してくれると思ってたんです。ですがプリントを見た彼女に「柚瑠木は、私にどうして欲しいの?」と聞かれて……」
柚瑠木さんにどうしたいのかではなく、自分にどうして欲しいのかと聞いた真澄さん。彼女は最初から柚瑠木さんが何を望んでいるのかを分かっていて、わざとそんな言い方をしたのでしょう。
でも、それはきっと柚瑠木さんのため……
「……だから、僕は真澄さんに言ったんです。この発表会に参加するから必ず見に来て欲しい、と。」
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