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「それで、真澄さんはなんて……?」
「彼女は「必ず見に行くから、頑張りなさい」そう言って僕の手を握ると、嬉しそうに微笑んで勇気づけてくれました。僕は真澄さんのその言葉を信じて、あの日の発表会に参加したんです。ですが……」
その言葉の続きは何となく想像がつきましたが、その事とあの事故がどう関係あるのかが分からなくて。私は柚瑠木さんの言葉の続きを待ちました。
「彼女は発表会を見には来なかった、真澄さんは僕との約束を守らなかったんです。」
そう言った柚瑠木さんの顔は悲しげで、約束を破られたことにどれだけショックを受けたのかが分かりました。でも、真澄さんがそんなに簡単に約束を破るような人だとも思えなくて……
「真澄さんにも何か、理由があったのではないのですか?理由もなく柚瑠木さんとの反故にする人ではないでしょう?」
「……分からないんです。あの日は発表会が終わると、家までの帰り道を僕は無我夢中で走っていました。真澄さんに会いたくて、彼女が来なかったわけを知りたくて。」
きっと柚瑠木さんも真澄さんにきちんとした理由があれば、来なかったことにも納得できると思ったのでしょう。そんな気持ちで一生懸命走っている柚瑠木さんの事が想像できます。
「あの交差点、信号の向こうから真澄さんがこっちに向かって走ってくるのが見えて……」
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