6673人が本棚に入れています
本棚に追加
「でもさっき、真澄さんの怪我は綺麗に治ったと……」
ご両親から何も教えてもらえないはずの柚瑠木さんが、どうやってその事を知ったのでしょうか？もしも、柚瑠木さんにその事を教えてくれる人がいるとしたら……
「そうです、使用人の希子さんがこっそり僕に教えてくれました。真澄さんの毎日の様子も、入院先もすべて。でも僕は……一度も彼女の見舞いには行かなかった。」
まるで自分は恩知らずで冷たい教え子だと、言わんばかりの柚瑠木さんの言葉。そうやって自分ばかりが悪いのだと、自身をずっと責めてきたのですか？
でも私には、それが柚瑠木さんの本心だとは思えないんです。
「柚瑠木さんはお見舞いに行かなかったのではないですよね、行けなかったんでしょう？」
その言葉に柚瑠木さんは悲しげな瞳で私の事をジッと見つめた後、小さく頷きました。
「真澄さんに会う事が怖かったんです。あの時、真澄さんに見に来て欲しいなんて我が儘を言わなければ……発表会の日だって僕がきちんと確認して渡っていれば、彼女がバイクを止めようとなんてしなかったはずです。」
「それは違います、悪いのはどう考えても飲酒運転のバイクじゃないですか！それなのに……」
真澄さんが事故にあったことで、自分ばかりを責めてしまう柚瑠木さんを見ているのは辛いです。もしかして他にも彼が自分を責める理由があるのでしょうか？
最初のコメントを投稿しよう！