契約結婚の全てを知って…

16/23
前へ
/322ページ
次へ
十条(じゅうじょう)コーポレーションが二階堂財閥(にかいどうざいばつ)と繋がりを持ちたがっていた事だって、それら全部が僕にとって都合が良かったんです。この契約結婚を月菜(つきな)さんが断れないようにすることが出来るから。」 「……どうして私だったのですか?」  柚瑠木(ゆるぎ)さんの立場なら、同じ条件でももっと魅力的な女性を選ぶ事だって出来たはずです。二階堂財閥の御曹司に嫁ぎたい女性はいくらでもいるのですから。  なぜその中から、私が柚瑠木さんに選ばれたのでしょうか? 「月菜さんは真面目で大人しい性格だと報告を受けていました。貴女の容姿から勝手に、弱くて自分では何も出来ないお嬢様なのだと決めつけていたんです。そんな女性なら契約を守り、僕の望むお飾りの妻になってくれるだろうと……」  柚瑠木さんのその言葉から、本当に彼は最初から私を愛するつもりなど無かった事が分かります。ただ、彼には妻という立場の女性が必要だった、それだけだったのでしょう。  ですが、それはきっと真澄さんとの過去があったから…… 「柚瑠木さんは妻となる相手を愛すること、そして愛されることも怖かったのですか?何の感情も持たないままの結婚生活をずっと続けるつもりで……?」  今までの柚瑠木さんの言葉や行動を見てきた私には、どうしてもそれが本当に彼が望んでいるようには思えないんです。柚瑠木さんは誰かを愛し、愛されたがっているように私は感じていて……
/322ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6673人が本棚に入れています
本棚に追加