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「私が、ですか?」
驚きました、柚瑠木さんが真澄さんではなく私の夢を見ることがあるなんて。でもあの夜に聞こえてきた彼の言葉を思い出してみると……
『お……い、だから……なさ…ん……』
あの時呼ばれたのは、私の名前だったのでしょうか?夢の中、この部屋から去ろうとする私を柚瑠木さんは引き止めてくれようとしていた?
「目が覚めてから月菜さんが部屋で眠っているのを確認すると、僕は急いで部屋を出ました。朝が来て貴方から別れが告げられるのが怖かった。ですが帰って来た部屋には月菜さんの姿はなく、僕は無我夢中で貴女を探して……」
「それであんなに走って私を迎えに来てくれたんですね。すみませんでした、柚瑠木さんにこんな不安な思いをさせてしまって。でも、私は……」
本当に申し訳ないと思っています、ですがそこまで私も柚瑠木さんに必要とされていたことが嬉しいんです。
だからその事をちゃんと伝えようと思ったのですが、柚瑠木さんは抱きしめたままの私の身体をソファーへと押し倒して……
「え、柚瑠木さん?」
「……追いかけますよ。これから何度、貴女が僕の前から去ろうとしても。月菜さんだけは、絶対に逃がしてあげられない。」
初めて見る、柚瑠木さんの切羽詰まったような表情。私だけ、彼のその言葉に胸が締め付けられるようで。
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