契約結婚を終える時には…

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 少しだけ、彼とのこの先を望むような言い方をしてしまったのは自分でも分かっていました。もし柚瑠木(ゆるぎ)さんがそんな私の言葉を聞いて呆れているのだとしたら?  だんだん心配になってきた私は、思わず…… 「すみません、柚瑠木さん。さっきの言葉は聞かなかったことにしてください!」  恋愛経験のないまま契約結婚をして柚瑠木さんの妻になった私では、彼に嫌な思いをさせているのではないかと不安だったんです。  思わず胸の前でギュッと組んでしまった手、そこに柚瑠木さんの手が自然に重ねられて…… 「駄目ですよ、聞かなかった事になんてしてあげません。」 「……え?あの、柚瑠木さん?」  チラリと柚瑠木さんは私を一瞬だけ見て、すぐにまた視線は前に戻されたのですが……その時の彼の瞳がいつもと違ったんです。  初めて会った時に私は柚瑠木さんの氷のような冷たい瞳に魅了されたのに、今の彼の瞳には炎が宿っているように感じました。 「月菜(つきな)さんの全てが僕のもの、なんですよね?そんな事を言う、貴女が悪いんですから……」  私が悪い……?柚瑠木さんは手を離すと、また運転に集中するように前だけを見ていて。その後、私が彼に言葉の意味を聞いても何も答えてはくれませんでした。  車内ではエンジン音と、ナビの無機質な音声案内だけが響きます。大通りから少し中に入って住宅街へと進み、とあるマンションの前でナビの案内が終了しました。  
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