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柚瑠木さんに繋いだ手を引っ張られ、そのまま「自分のだ」と言わんばかり抱き寄せられてしまいました。大胆な柚瑠木さんの行動に驚いて焦る私と、その様子を見て笑いだす真澄さん。
でも二人とも大事な事を忘れてますよね……
「あの、柚瑠木さん。ここはマンションの入り口なので……」
マンションに出入りする人もこの建物に面した道路の歩行者も、さっきからこちらをチラチラと見ていらっしゃるんです。柚瑠木さんも、真澄さんも話に夢中で気付いて無かったでしょう?
真澄さんは周りを見渡して、これ以上この場所では話しにくいと感じたようで……
「そうだったわね。どうせ二人とも話したい事、聞きたい事が色々あるはずよね?私の部屋に行きましょう。」
真面目な顔でそれだけ言うと、彼女はさっさとエレベーターに向かって歩き出しました。さっきまであれほど笑っていたのに……切り替えの早い女性なんですね、真澄さんって。
私と柚瑠木さんも彼女の後をついていき、エレベーターに乗り込みました。でもこんな夜遅くに真澄さんの部屋にお邪魔していいのかと不安になって……
「あの……」
「ああ、気にしないで。夫は単身赴任だし、私に子供はいないの。話し相手が出来てちょうどいいくらいよ。」
そう言ってヒラヒラと手を振る真澄さん。どうして彼女は私が言いたかったことが分かったのでしょう?柚瑠木さんの言っていた通り不思議な魅力のある女性です。
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