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「はいはい、そんなに惚気られたら夫と離れて暮らしている私が可哀想だと思わない?少しくらい遠慮してくれてもいいのよ。」
そうでした、真澄さんの旦那さんは今は単身赴任中だと聞きました。それなのに私達はさっきから彼女の前で、手を繋いで頬を寄せあったりしていたんですよね。
真澄さんはそう言って笑ってくれていますが、私は一言謝ろうと思ったんです。ですが、それよりも先に柚瑠木さんが口を開いて……
「遠慮なんてしませんよ、僕は。寂しいと思うなら真澄さんも旦那さんに会いに行けばいいでしょう?貴女ならそれくらい簡単に出来るはずですから。」
「……え、柚瑠木さん?」
謝ろうと思っていた私と全く逆の答えを言われて戸惑ってしまいます。でもそんな柚瑠木さんの言葉に真澄さんは楽しそうに笑いだしてしまって。
「あははは!そうね、柚瑠木君の言う通りだわ。会いに行けばいいのよね、私から。」
「そうですよ、大人しく旦那さんを待っているだけの妻なんて貴女には似合わないでしょう?」
そう言ってフッと微笑んで見せる柚瑠木さん。ああ、真澄さんが旦那さんに会いたいのを我慢している事に気付いて、彼はこんな言葉を……
柚瑠木さんの隠れた優しさを知れば知るほど、彼にどんどん惹かれていきます。この人が私の旦那さまで良かったと、心から思うんです。
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