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「……今も、怖いですか?待ってる相手に会いに行くことが。」
真澄さんから受け取った珈琲カップをテーブルに置いて、柚瑠木さんは彼女にそう問いかけました。柚瑠木さんのその言葉には、何か深い意味があるように思えて……
真澄さんは静かにテーブルの前に腰を下ろして、しばらく自分の珈琲カップを見つめていました。
「そうね、私はまだ怖いの。私だってあの日、あの時の事ばかり考えて生きている訳じゃないわ。それでもあの日、私がもっとちゃんと考えて行動してればと思い出さないわけではなくて……」
その言葉で、真澄さんが今もあの事故に囚われているのだと分かりました。でもあの事故で彼女が自分を責める必要など無いはず、それなのにどうして?
「あの事故で真澄さんが悪いことなどなかったはずです。僕のことを命がけで守った貴女を誰か責めましたか?」
「そうじゃない!そうじゃないのよ……柚瑠木君だって本当はもう知っているんでしょう?」
真澄さんが自分を責める必要はないと言う柚瑠木さんに、彼女は顔を上げてそう答えました。さっきまでの明るい笑顔は消え、今は何かに耐えるような苦しさと悲しみを合わせた様な表情をしています。
私は戸惑い柚瑠木さんを見ると、彼は瞳を閉じていましたがゆっくりとその目を開けると……
「……知ってます。バイクの運転手に僕を狙うように指示したのが真澄さんの身内だという事ですよね?」
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