契約結婚を終える時には…

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 今、なんて……?  私にとっては衝撃の言葉でしたが、柚瑠木(ゆるぎ)さんは表情を少しも変えることなく淡々と話しだしました。  でもそれはきっと彼が感情的に話してしまえば、余計に真澄(ますみ)さんを傷付けてしまうはず。そうならないようにとの、柚瑠木さんの優しさなのではないでしょうか? 「父と母はあの事故の後、真澄さんの話をする事を許さなくなりました。両親の頑なな態度と貴女があの事故の後に姿を消したことを考えれば、そう想像するのは難しい事ではなかったです。」 「そうよね、貴方は昔から聡明な子だった……」  一度顔を上げて柚瑠木さんを見つめた後、真澄さんはまた俯いてしまいました。でも、私には真澄さんがその事件に積極的に関わっていたとは思えないのです。  そんな方が、柚瑠木さんの事をその身を挺して庇うでしょうか? 「それでもきちんと調べあげるまで、どこかで僕の考えは間違いであって欲しいとも思ってましたが……」  そうですよね、柚瑠木さんだって真澄さんがそんな女性ではないと思ったはずです。なにか、そうなった訳があるのかもしれません。 「でも、真澄さんが事件に巻き込まれた詳しい経緯までは分からなかった。だから話して欲しいんです。あの発表会の日、遅れてきた貴女に何があったのかを……」
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