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「チクン」と胸に針が刺さったような気がしました。真澄さんは悪気があって言っている訳ではない、彼女は本当に柚瑠木さんに色んな事を知って欲しいと思っただけのはず。そう分かっているのに……
私が先に柚瑠木さんに出会っていれば良かったのに、そう思ってしまうのは私が欲張りだからなのでしょうか。こんな時にまで嫉妬してしまう自分が嫌になりそうです。
「そう考えたのが真澄さんでなければ、きっと余計なお世話だと思ったでしょうね。それくらい貴方は僕に色んな事を教えてくれましたから。良い事も、悪い事も……」
子供の頃を思い出したのか、ふっと優しく微笑む柚瑠木さん。滅多に見せない笑顔も、こうして真澄さんの前では自然に出しているのです。
やはり柚瑠木さんと真澄さんには私が入る事の出来ない特別な何かがあるようで、つい彼の手をギュッと握ってしまいました。
「そう、それは良かったわ。あの時教える事の出来なかった感情も、もう私が教える必要は無さそうだしね?」
「ふふふ」と楽しそうに微笑む真澄さんの視線の先は、私?戸惑って柚瑠木さんを見上げると、彼も私の事を見つめていて小さく頷いたんです。
「ええ。誰かを離れられない程恋しく想う事も、自分の手で守りたいという愛しい気持ちも月菜さんが僕に教えてくれたんです。彼女ならきっとこれからも僕の中の色んな感情を育ててくれるはずですから。」
「……柚瑠木さん。」
子供の頃に柚瑠木さんにとって必要な存在だった真澄さん、でもこれから先ずっと貴方に必要とされるのは私という事でいいんですか……?
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