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「そのうち父は、私に柚瑠木君をもっと外に出してやったらどうかと話すようになったわ。なぜそんな事にまで口を出すのかと思ったけれど、私も父と同じ考えだったし深くは考えなかった」
真澄さんのお父さんは、彼女の真っ直ぐで積極的な性格をよく知っているはず。そんな真澄さんを柚瑠木さんの傍に置いて、彼女の存在をうまく利用していたのでしょうか……?
「その時ちゃんと考えていればよかったの。柚瑠木君は私とは立場が全然違う、二階堂財閥の御曹司だって事を」
「……真澄さん」
確かにその当時の柚瑠木さんを、簡単に外に出すという行為は良くなかったかもしれません。でも、その事故は柚瑠木さんの学校帰りに起きたはず。だったらそれは関係ないのでは……?
「……もし真澄さんが僕をそんな風に考えて接していたとしたら、僕はあんなに貴女に懐いたりはしなかった。それに真澄さんが教えてくれた茜色の空や真っ直ぐな飛行機雲、商店街の明るい店主も……僕は全部忘れていませんから」
柚瑠木さんは決して真澄さんを責めたりせず、彼にとって彼女との思い出はとても大切なものだと言っているのでしょう。
言い方は少し遠回しだけど、やっぱり柚瑠木さんはとても優しい人だと思うんです。
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