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「そうね、私がそう考えていれば柚瑠木君の信頼は得られなかったのかもしれない。だけどそれを含めて私は、彼らにとって適役だったのでしょうね」
……適役。真澄さんはきっと柚瑠木さんの事を思って、色々行動していたはずなのに。彼女の思いやりや優しさ、それもすべてあの事故を起こすために都合が良かっただけだと?
今度は柚瑠木さんも何も言いません、でも彼は少しだけ下唇を噛んでいる事に気付きました。きっと柚瑠木さんもその事が悔しいのでしょう。
「そして半年が経ち柚瑠木君が少しずつ外の世界に慣れ始めた時、クラスメイトが発表会に出るように貴方を誘いに来た」
「……ええ、珍しいとは思いました。でも僕はその時、真澄さんに見に来てもらえないか頭がいっぱいになっていて」
珍しい、その言葉に「まさか」と思いました。柚瑠木さんから始め聞いた時には何も感じなかったのですが、真澄さんの話を聞けばそれさえも疑わしく感じてしまって。
「それも……手を回されたと言う事ですか?」
「そうでしょうね、他の行事で同級生が僕を誘いに来たことは一度ありませんでした。そうすることで僕が発表会に出る可能性を上げたかったのかもしれません」
そんな事のために、周りの子供達まで巻き込んで?今だって彼は無表情ですが、その事に傷付いてないはずがないのに。
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