6657人が本棚に入れています
本棚に追加
「真澄さんのお父さんは何故、そんなに発表会にこだわったんですか?真澄さんだって柚瑠木さんを外に連れ出しているのだから、その時でも不可能ではないですよね」
わざわざ自分の娘を柚瑠木さんの家庭教師として置いておくのならば、その方が簡単だったのではないかと思ったんです。
「私が傍にいる状態で柚瑠木君が事故に合えば、親も含めての責任問題にもなるし真っ先に疑われる。父はそう考えたのでしょうね……あの日、父たちは発表会に行こうとする私を部屋に閉じ込めて出そうとしなかった」
「真澄さんを部屋に閉じ込めてまで……?」
それで真澄さんは柚瑠木さんの発表会を見に行くことが出来なかったのですね。やっぱり、真澄さんは簡単に柚瑠木さんとの約束を破るような人ではなかったんです。
「それまでモヤモヤしていた疑問がはっきりと「おかしい」って形になって、私は柚瑠木君の事が心配でたまらなくなった。家族に気付かれないように、二階の自室の窓からそっと抜け出して学校に行くために走ったわ」
ああ真澄さんに会うために学校から走って帰る柚瑠木さんと、彼を心配して学校まで向かった真澄さん。
でもやっと相手を見つけたその場所が……
「柚瑠木君を見つけたあの時、私からしか見えない方向から猛スピードのバイクが貴方に向かってきていて……考える余裕なんてなく、私はそのバイクに向かって走ってた」
最初のコメントを投稿しよう!