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「……え、あれ?」
さっきまで柚瑠木さんが読んでいた、カバーの付いた本をそっと開いて驚きます。それは私が隠して愛読している、ちょっとだけ不思議な恋の物語で……
柚瑠木さんが普段読んでいるような経済や経営学の本ではありませんでした。
「どうして、これを柚瑠木さんが……?」
私の本はこっそりクローゼットの中に隠しています、柚瑠木さんがそれを見つけ出して読んでいるとも思えませんし。
栞の挟まれたページは私もお気に入りのシーン、柚瑠木さんが私と同じものを読んでいるなんて不思議な気持ちで……
「月菜さんは悪い妻ですね、勝手に夫の本を盗み見るなんて」
「ゆ、柚瑠木さん!これは、あの……っ」
いつの間にかお風呂を済ませた柚瑠木さんにソファーの後ろから腕を回されて、心臓がバクバクと音を立てています。
背後から抱きしめられるような体勢のまま、持っていた本を柚瑠木さんに奪われて……
「駄目ですよ、今は僕だけを見る時間です。こんな本の中のヒーローにまでヤキモチ妬かせないで」
「柚瑠木さん……」
どうすればいいのでしょうか、甘えてくる柚瑠木さんがとても可愛いです。私は回された腕に自分の手を重ねて、そっと呟きました。
「柚瑠木さんを見てます、ずっと貴方だけ……」
その言葉を聞いた柚瑠木さんは首に外していた腕を外すと、私の脇と膝に手を差し込んでそのまま軽々と抱き上げたんです。
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