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黙っている柚瑠木さんに困ってしまい、私はただオロオロする事しか出来ません。さっきまでとてもよく似合うと、微笑んでくれていたのに……
「ここは少し寒くありませんか、月菜さん」
「……え? いえ、そこまでは」
そう言ったのに柚瑠木さんは立ち上がると、自分が着ていたカーディガンを脱いで私に羽織らせました。えっと、本当に私は寒くないのですけど?
不思議に思って柚瑠木さんを見上げると、彼は納得したように頷き私に微笑みます。
「あの……? やっぱり変でしたか」
「いいえ、とてもよく似合ってましたよ。月菜さんの大人っぽさに気付けて良かったと」
柚瑠木さんが嘘をついているようには見えないのです。ならばなぜ私の服を隠すようなことをするのでしょう?せっかく香津美さんと選んだのに隠されてしまい、ガッカリしていると柚瑠木さんは咳払いをして……
「その……嫉妬深い夫ですみません。ですが、今日の月菜さんの服は少し肌の露出が多い様なので」
そう言って困ったように私を見つめる柚瑠木さん。確かにシアーシャツの下にはキャミソールを着ていますが、肌は透けて見えます。だから彼は心配してくれたのでしょうか?
「ふふふ、そんな心配しなくてもいいと思いますけど」
柚瑠木さんみたいに素敵な人なら分かりますが、背の低い童顔の私を見る人なんていないと思うのです。
「月菜さんは自分の事をちゃんと分かっていないから……」
呆れたようにそう言われて、ちょっと戸惑ってしまいました。柚瑠木さんも匡介さんの様に心配性の旦那様なのですね。
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