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当然のように繋がれる柚瑠木さんと私の手、嬉しくて顔が緩んでしまいそうです。歩幅だって背に低い私に合わせてくれる、そんなさりげない優しさを感じて本当に彼の妻であることが幸せだと思うんです。
「せっかくお洒落してくれたのですしスポーツはまた今度にして、今日は二人でドライブしましょうか」
「え、でも……」
そうでした、柚瑠木さんとスポーツをしたいと言ったのは私の方なのです。そのために柚瑠木さんがデートプランを考えてくれていたとしたら申し訳なくて。
ここからレジデンスまでそう遠くは無いし、この服を着替えれば……
「ダメですよ、着替えたりなんてしないでください。一段と魅力的になった月菜さんを、助手席に乗せる権利を僕から奪わないで」
「柚瑠木さんっ……」
心通じ合うようになってから、柚瑠木さんはこうやって甘い言葉を私にくれます。ですが慣れない褒め言葉の数々に、私は恥ずかしくなるばかり。
そんな恥ずかしがる顔でさえ、彼は「可愛いからもっと見たい」と言うのです。
「どうぞ、月菜さん」
助手席のドアを開けて私を座らせると、彼も運転席へと乗り込みます。今日は天気が良くて少し熱いのですが、カーディガンは脱がない方がいいですよね?
どうしようかと視線を彷徨わせていると、柚瑠木さんからカーディガンを引っ張られて……
「ここなら他人からはジロジロは見られないでしょうから」
そう言って、彼は私からカーディガンを脱がせました。その言葉で私は彼が他人に見られたことに嫉妬してくれていたと気付いたのです。
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