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でもそれもたまには良いかもしれません。だって私はいつも柚瑠木さんが他の女性の視線を集めている事にハラハラさせられっぱなしなのですから。時には私がヤキモチ妬かせる方だったとしても、罰は当たらないと思います。
「楽しそうですね、月菜さん。貴女が夫の僕にヤキモチばかり妬かせるような悪い妻だったなんて」
「……ご、ごめんなさい。でも嬉しくて」
柚瑠木さんにジッと睨まれて、彼を不機嫌にさせてしまったのかと不安になります。だけど私が謝れば柚瑠木さんは私の額に軽く拳を当てて……
「月菜さんはそんな風に素直だから、怒るに怒れないじゃないですか。そういうところ、狡いですよ?」
そんな優しい言葉でなら、柚瑠木さんにどれだけ責められたって平気です。それにそういうところも好きだって言ってくれているようで、もっともっと胸がいっぱいになるんです。
「狡くてもいいです、柚瑠木さんが私の事をたくさん考えてくれるだけで幸せなので」
「……やっぱり小悪魔ですね、月菜さんは」
私を見つめて困ったように溜息をついた後、柚瑠木さんは前を向いて車のエンジンをかけました。今度こそ怒らせてしまったのでしょうか?
「……他の男性にそんな事言ったら、許しませんからね?」
ムスッとしたまま前だけを見てそう言う柚瑠木さん、もしかしてテレていらっしゃるのでしょうか?
「もちろんです、私には柚瑠木さんだけですから!」
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