番外編 貴方が選んでくれた物だから 前編

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「……はい、ちょっとだけ」  柚瑠木(ゆるぎ)さんに見つめられると嘘をつくことは出来なくて、私が少し嫉妬してしまったことを正直に伝えました。面倒な妻だと思われたらどうしましょう……  ですがそんな私の心配は杞憂だったようで、柚瑠木さんは嬉しそうに目を細めてこちらを見ていました。 「月菜(つきな)さんが心配するようなことは何もありませんが、こうやって貴女の拗ねた顔が見れて嬉しいです」  そんな風に言われたら、私はどんな顔をすればいいのでしょうか? 柚瑠木さんの前でどんな表情をしても、こうやって喜ばせてしまうだけなんですから。 『ちょっとー、電話しながら二人の世界作るの止めてくれない? 柚瑠木兄さんのデレデレした顔とか想像したくもないし』  柚瑠木さんのスマホから女性の声が聞こえて、二人がまだ電話の途中だという事を思い出しました。さっきの会話も全部彼女に筒抜けだったようで、笑い声が聞こえてきました。 「彼女は二階堂(にかいどう) 千夏(ちなつ)、僕の従姉妹です。訳あってあまり人前に顔を出すことはありませんが、信頼できる女性ですよ」 「柚瑠木さんの、従姉妹?」  とても親しそうに話をしていたのは、昔からの付き合いだったからなのでしょうか。私はそんな事も知らずに嫉妬ばかりして……
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