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「……はい、ちょっとだけ」
柚瑠木さんに見つめられると嘘をつくことは出来なくて、私が少し嫉妬してしまったことを正直に伝えました。面倒な妻だと思われたらどうしましょう……
ですがそんな私の心配は杞憂だったようで、柚瑠木さんは嬉しそうに目を細めてこちらを見ていました。
「月菜さんが心配するようなことは何もありませんが、こうやって貴女の拗ねた顔が見れて嬉しいです」
そんな風に言われたら、私はどんな顔をすればいいのでしょうか? 柚瑠木さんの前でどんな表情をしても、こうやって喜ばせてしまうだけなんですから。
『ちょっとー、電話しながら二人の世界作るの止めてくれない? 柚瑠木兄さんのデレデレした顔とか想像したくもないし』
柚瑠木さんのスマホから女性の声が聞こえて、二人がまだ電話の途中だという事を思い出しました。さっきの会話も全部彼女に筒抜けだったようで、笑い声が聞こえてきました。
「彼女は二階堂 千夏、僕の従姉妹です。訳あってあまり人前に顔を出すことはありませんが、信頼できる女性ですよ」
「柚瑠木さんの、従姉妹?」
とても親しそうに話をしていたのは、昔からの付き合いだったからなのでしょうか。私はそんな事も知らずに嫉妬ばかりして……
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