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『……え? いや、でも私は……』
しかしそんな私の発言は千夏さんを戸惑わせてしまうものだったようで、彼女は返答に困っているようでした。柚瑠木さんは千夏さんがあまり顔を出さないと言っていたのに、私はそれを深く考えていなかったのです。
『あのね、月菜さん。気持ちは嬉しいのだけど……』
申し訳なさそうに千夏さんがそう言いかけた、その時……
「いいじゃないですか、千夏も月菜さんと会いたいと言っていたでしょう? どうせそこにいても、千夏は部屋に籠ってばかりなんですから」
『柚瑠木兄さん、そうは言っても……』
柚瑠木さんが誘ってみてもなかなか「うん」とは言ってくれない千夏さん。ですが柚瑠木さんはそんな千夏さんの事情もちゃんと理解しているようで……
「心配いりません、千夏の家族だって僕が貴女を呼べと言えば文句は言えないでしょう? 近いうちに迎えに来る日時を連絡しますから、準備しておいてくださいね」
珍しいですね、柚瑠木さんがお願いではなくこんなに強引に約束を取り付けるのは。そこまでしなければ千夏さんは素直に出てきてくれないという事なのでしょうか?
『もう、それは狡いでしょ? 分かったわよ、月菜さんによろしくね』
そう言って千夏さんは呆れた様子で電話を切ったのです。本当にこれで良かったのでしょうか?
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