6656人が本棚に入れています
本棚に追加
/322ページ
車をパーキングに止めて助手席のドアを開け、差し出された手に自分の手のひらを重ねて歩き出します。都心からは離れた場所の平日に昼間という事もあってか、思っていたほど混雑はしていませんでした。これも柚瑠木さんが気を使ってくれたのかもしれません。
可愛いらしい形の花壇や植木に気を取られ、キョロキョロとしていると柚瑠木さんに横から笑われてしまいます。
「そんなに慌てて歩いていると転んでしまいますよ、月菜さん」
「すみません、ついどれもこれも気になってしまって。植物園は久しぶりで嬉しくて……」
あまりはしゃぎ過ぎていたら、柚瑠木さんに迷惑をかけてしまいますね。今度は彼に恥をかかせないよう柚瑠木さんの隣で大人しく歩き出します。せっかく大人っぽいコーデにしたんです、それっぽく振舞わなくては。
すると柚瑠木さんは立ち止まって肩を震わせて……
「柚瑠木さん? あの、どうしましたか……」
「だって、月菜さんが可愛い勘違いをするから。 僕はただ時間は気にしなくていいので、ゆっくり見て回りましょうって意味だったのに……ふふっ」
そうだったのですか、それならちゃんとそう伝えてくれればいいのに。
「そんなに笑わなくてもいいじゃないですか。私だって緊張であまり余裕が無いんです」
「……知ってます。そんな月菜さんを相手にしてるので、僕も余裕なんかありませんよ?」
最初のコメントを投稿しよう!