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そんなヤキモチを妬いている柚瑠木さんと妬かれて喜んでいる私は、なんだかんだでお似合いの夫婦なのだと思います。でもそんな二人の様子をしっかりと見ていた人物がいて……
「……コホン。そろそろ始めたいのですが、よろしいですか?」
「え? ああっ、気付かなくてすみません!」
いつの間にかテーブルの横に立っていた先程とは違うスタッフの男性。この方にまでさっきのやり取りをしっかりと見られていたのかと思うと、恥ずかしくて俯いてしまいそうになります。
「はい、お願いします。ほら月菜さん、俯いていたら何も見れませんよ?」
柚瑠木さんの言葉ですぐに顔を上げると、スタッフの男性の隣に筒状の調理器具だと思われる物を持ってスタンバイされていました。
もしかして、それって……?
「それでは、はじめさせて頂きますね」
よく見えるようになのか、移動式の調理台のようなものにセットされた筒状の器具。先に運ばれていた私のお皿をセットすると、ゆっくりとペーストが降りてきてお皿の球体を優しく包むように重ねられていくんです。
細い糸のようなそのペーストが重なって出来上がっていくモンブランは、これから先も共に時間を重ねていくであろう私と柚瑠木さんの未来の様のようで。もし柚瑠木さんが同じように想ってくれたらいいのに、と。
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