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「出来上がりです。どうぞ、搾りたての味をお楽しみください」
柚瑠木さんのモンブランまで完成させると、スタッフの男性は丁寧に頭を下げそのまま別のテーブルへ。
「あの、ありがとうございます。柚瑠木さんはこの日のために本当に色んな予定を立て準備してくれたんですよね。何だか私、夢の中にいるようで……」
「夢にしては駄目ですよ、今日は僕が月菜さんに夢より幸せな一日をプレゼントする日なんですから」
もう、十分幸せなのに。柚瑠木さんはもっともっとと、私にこれ以上ないくらいの愛情と優しさをくれるのです。だから柚瑠木さんの誕生日は、私が彼を思いきり幸せにしてあげたい。
「さあ、食べましょう。スタッフも言っていた通りこのモンブランは搾りたてを味わわなくては」
「はい、そうですね」
搾りたてのマロンペーストを口に運ぶと、その滑らかさに驚いてしまいます。普段食べるモンブランと違ってふわっと口に広がるような栗の濃厚な味を楽しむことが出来ました。甘さ控えめなのもあり、少し大きめのモンブランでしたがすぐに食べ終えてしまいました。
「どうでした? 正直もっと派手にお祝いした方が良いのかと迷いましたが、僕が月菜さんと二人で静かに祝えたらという気持ちもあって」
「いいえ、私は柚瑠木さんの選んでくれたこの店も動植物園も全部嬉しいです。それに柚瑠木さんが静かに祝いたいと言ってくれるのなら、私もそれがいいですし……」
だからと言って彼は妻の私が嫌がるようなことをわざわざしようとなんてしたりしない。ですから今日は貴方の選んでくれた色んな事を素直に楽しみたいんです。
「そろそろ出ましょうか?」
「……はい」
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