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「月菜さん……?」
私の為を思ってであろう柚瑠木さんの言葉を遮って、私はじっと彼を睨みつけました。だってそうですよ、柚瑠木さんがそんな風に思っていた事、私は初めて聞いたんですから。
「そうやって柚瑠木さんが私の事ばかり優先しちゃうのは、駄目です。私はどんな時だって柚瑠木さんが本音で話せる存在でありたい、それは贅沢ですか?」
もうお互いに一方的に相手を思う関係ではないのですから、私ばかり大切にされてるだけじゃ満足できません。私も同じように貴方のために何かをしたい。
「……月菜さん、僕は」
「分かってます、全部私の為だって。ですが私だって柚瑠木さんに遠慮なんてして欲しくない、その気持ちはずっと変わらないんですよ?」
好きだから、相手を深く想うから逆に言えなくなる言葉もあるんだって知らない訳じゃないんです。私だって柚瑠木さんに嫌われるのが怖くて、最初はそうでしたから。
でも今はどんな柚瑠木さんの考えも言葉も受け止めることが出来ると思っています。だから……
「柚瑠木さんの本音を聞かせてくれませんか? 今、柚瑠木さんが子供を欲しいと思っているのかを」
「……月菜さん」
助手席から身を乗り出すようにして、柚瑠木さんの手に自分の手を重ねます。この気持ちが少しでも伝わるように彼をジッと見つめて……
「私は欲しいです、柚瑠木さんとの赤ちゃん。だから柚瑠木さんの気持ち……ちゃんと聞かせてください」
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