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「……え? あの、柚瑠木さん」
「待って、もう少しだけそのままジッとしていてください」
耳朶に触れる柚瑠木さんの指と冷たい金属、これってもしかして?柚瑠木さんが何をしているのか気になって仕方がありませんでしたが、彼に言われた通りジッと待ちました。
柚瑠木さんも少し緊張しているのでしょうか、左右の耳朶を何度も確かめるように触れて……
「……しまったな、もっと大人っぽいのを選ぶべきだったのかもしれません」
そう言って私から離れた柚瑠木さんは、ダッシュボードから鏡を取り出して私を映して見せました。
彼が先程触れた左右の耳朶にはハートの形を重ねた可愛らしいイヤリング。その短いチェーンの先に……多分私の誕生石であるエメラルド。
「あの、これって……?」
「僕からの誕生日プレゼントです。月菜さんに似合うのを選んだつもりでしたが、今日の貴女はとても大人っぽいから……」
そう言って照れたように私から目を逸らす柚瑠木さんですが、きっとこれを選ぶまでに私の事をたくさん思い浮かべてくれたのだと思います。
プレゼントは勿論嬉しいですが、忙しいはずの柚瑠木さんがこうして時間を割いて悩んでくれたことも心に響いてくるんです。
「その……今の格好に合わないと思うのなら、それは外しても」
「そんな事しません、だってこれは……貴方が選んでくれた物だから」
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