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柚瑠木さんの言葉に、私はコクリと頷きました。
多分、今まで柚瑠木さんも色々と千夏さんのためにやってきたのでしょう。それでも彼女の考えを変えることが出来なかったのだと思います。
……もし私がそんな千夏さんの気持ちを少しでも前向きに出来るのだとしたら、そのために出来る限り頑張りたい。
「分かりました、私は千夏さんとお友達になってみせます!」
昔から諦めずに頑張る性格は褒めてもらうことが出来たんです、ですからこれは千夏さんと私の勝負になります! これからすっと一人で生きていくなんて、優しい彼女にそんな未来を選んで欲しくない。
気合を入れて拳を握る私の頬にそっと手で触れる柚瑠木さん、それが嬉しくて私もその手にスリスリと頬を寄せるました。大きくて暖かな手のひらはこんなにも私を幸せな気持ちにしてくれる。
「千夏は愛する事も愛されることも知りません、いつか彼女にそれを教えてくれる男性が現れてくれればいいのですが……」
「……愛する事も愛される事も、ですか」
千夏さんは私が思っているよりも、ずっと複雑な環境に置かれているのかもしれません。ですが私は柚瑠木さんにはそれ以上訊ねる事はしませんでした。
詳しい話はちゃんと千夏さん本人から聞けるようになりたかったから。
「きっと、千夏さんにも現れるはずですよ。特別な誰かが」
私がそう言うと、柚瑠木さんも静かに頷いてくれました。そうして、あっという間に千夏さんとの約束の日がやってきたのでした。
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