番外編 新しい出会いは必然で 前変

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「私が柚瑠木(ゆるぎ)さんを……ですか?」 「ええ、もちろんいい意味でよ。昔の柚瑠木兄さんはもっと冷徹な感じで、周りに興味を持たない人だったもの」  千夏(ちなつ)さんの言う通り私も結婚当初は随分冷たい態度を取られました、ですがその頃だって彼に優しい所はあったのです。  それを言いたくて千夏さんを見つめると…… 「もちろん、いい所だってあるのは分かってるのよ。こんな私にも他の親族と同じように接してくれるのは柚瑠木兄さんくらいだもの。でも月菜(つきな)さんと暮らし始めて柚瑠木兄さんは随分人間らしくなったから」 「千夏さん……」  柚瑠木さんが千夏さんを心配しているように、彼女も従兄妹である柚瑠木さんの事をずっと気にしていたのでしょう。  そんな自分が入れない二人の特別な関係に何だか嫉妬しちゃいそうです。 「千夏は僕の心配よりも自分の心配をしてはどうなんですか? このままずっと夢見ていた仕事や恋愛、結婚まですべて諦めてあの部屋の苔になりたいとでも? まあ千夏がどうしてもと言うのならば、僕たちは止めませんけれど」 「苔は酷くない!? いくら私だってそこまでジメジメしてるつもりはないわよ」  柚瑠木さんなりに千夏さんをもっと外に出そうという考えなんでしょうけれど、それでも、苔はあんまりだと思いますよ?  
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