番外編 新しい出会いは必然で 前変

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「だからお願いよ、月菜(つきな)さん。私とアクセサリーの交換を……って、いったあ!」  千夏(ちなつ)さんが私に悲し気な笑顔でそう言った瞬間、彼女の後頭部から「ゴン」という鈍い音がしました。両手で頭を押さえて痛がる彼女の後ろに立っているのは、怖い顔をした柚瑠木(ゆるぎ)さんで……  拳骨をされたらしい千夏さんは勢い良く頭を上げて、そのまま柚瑠木さんの事をキッと睨みました。 「痛いじゃない、いきなり何をするのよ柚瑠木兄さん!」 「何をしてるんだはこちらのセリフですが? 何を被害者ぶって月菜さんの同情を買おうとしてるんですか、貴女は」  ピシャリと柚瑠木さんにそう言われて、千夏さんは「だって、仕方がないじゃない」と繰り返しています。そんな彼女の様子に、柚瑠木さんは大きく息を吐いて…… 「最初から反抗らしいこともせず諦めてしまっているくせに、月菜さんから同情してもらおうなんて考えるからです。何度も言いますが僕は千夏が考えを変えれば貴女一人くらいどうにだって……」 「余計なお世話よ、柚瑠木兄さん! 私はこの生活で充分満足してるの」  大きな声でそう言った千夏さんでしたが、その顔は俯いたまま。私達にその表情を全く見せてくれません。  ……本当にこれが千夏さんの嘘偽りない本音なのでしょうか?
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