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「いつか、千夏にも現れるといいですね。己の生き方そのものを変えてしまいたくなるほどの特別な相手が」
困ったように微笑んで柚瑠木さんは千夏さんの頭を撫でています、二人を見ていると仲の良い兄妹のようで少し羨ましくもあり……
だけどそんな柚瑠木さんの言葉も千夏さんは素直には受け取ることが出来ないのでしょう。
「そんな柚瑠木兄さんみたいに上手くいくわけ無いじゃない。私なんて誰にも相手になんかされないのに……」
どうして? 千夏さんには彼女にしかない魅力があるのに、なぜそんな風に思いこんでるのですか? 私は千夏さんにこれ以上自分を傷付けて欲しくありません。
「そんな事ありません! 千夏さんは明るくて優しくてとても素敵な女性です。そんな風に自分を卑下しないでください」
私が大きな声を出したので千夏さんはビックリしたようでしたが、すぐに笑顔を浮かべて私に抱きついて来て……
「月菜さん、私は貴女の事すっごく好きよ。こんな風に私の事を怒ってくれるのってずっと柚瑠木兄だけだったから……どうしよう、すごく嬉しいわ」
「千夏さん……」
誰かにこうして怒られることも無いなんて、彼女は普段どんな生活をしているのでしょう? 訊ねるような眼差しを向ければ、千夏さんに困ったように微笑まれそれ以上教えてもらうことは出来ません。
千夏さんの気が済むまで抱きしめてもらい、私達は次の目的地へと向けて車に乗り込みました。
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