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「千夏、こうやって月菜さんが悲しむ様子をみても、まだあんな親のために部屋に閉じこもり続ける気ですか?」
「柚瑠木兄さん、私は別にあの人のためになんか……」
真剣な表情で千夏さんを説得しようとする柚瑠木さん、ですが千夏さんもなかなかその言葉に頷こうとはしません。彼女はいったい何にそんなに縛られているのでしょうか?
私からは何も言えず、ただ二人のやり取りを見守っていると……
「千夏! いつまでそうして外に出ているつもりだ、お前はさっさと奥の部屋に戻っていなさい!」
いつの間にか屋敷の玄関に立っていた千夏さんのお父様が、こちらを睨んで大きな声で千夏さんを呼びました。なぜ娘の千夏さんにそんな乱暴な言い方をするのでしょうか?
「千夏、一度くらい親に反抗したって誰も貴女を責めたりしませんよ?」
「……柚瑠木兄さん」
父親に呼ばれ急いで帰ろうとする千夏さんの手首を柚瑠木さんが掴みます。その手を見つめる千夏さんの瞳が迷い揺れていました。
「ごめんなさい、今日はありがとう」
そう言って千夏さんは柚瑠木さんの手から逃れ、走って屋敷の中へと消えていってしまいました。私と柚瑠木さんは顔を合わせた後、千夏さんのお父様に挨拶をして二人で車に乗り込みます。
私の手に残ったのは千夏さんの作ったアクセサリー、それをジッと見つめてこれからの事を考えていました。
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