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「今はそうかもしれないけれど未来のことなんて誰にも分からないわ。私だって結婚する時には、自分が聖壱さんとの子授かるなんて想像もしなかったもの」
そう話す香津美さんに私も同じ気持ちで頷きます。なぜなら私達は何となく気付いているんです、杏凛さんが本当は匡介さんのことをただの契約結婚の相手とは思っていないという事を。
それが愛や恋ではないにしても、彼女は匡介さんに心揺らされているようなんです。
「そうなのでしょうか? 私は自信がありません、この結婚は最初から終わりに向かって進んでるのですから」
そう話す杏凛さんはどこか寂しげに見えます、その素直な気持ちを匡介さんに話せばきっと二人の関係もずっと変わるはずなのに……
杏凛さんは匡介さんに大切な自分の気持ちをいつも伝えられないでいるようです。
「そうね、でも杏凛さんは本当にそれでいいと思ってる?」
「……それは、仕方ないと」
香津美さんの言葉に杏凛さんはしどろもどろで応えます。けれどその言い方で彼女がこの契約結婚の終わりを望んでいないことが分かるんです。
でも、杏凛さんを何と言って励ませばいいのかを私達はまだ悩んでいました。
「まあね、この話は三人でまたゆっくりしましょう? そう言えば、二人に見せようと思ってたものがあってね?」
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