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「それって聖壱さんも知ってらっしゃるんですか?」
「いいえ? 別に本当の男性と恋をしてるわけじゃないし、どんなに素敵でもゲームの中のキャラだしね」
ああ、そんな理屈があの俺様な聖壱さんに通じるのでしょうか? もう一度杏凛さんの方を見れば、彼女は小さく首を振るだけ……
バレた時の香津美さんが心配でしたが、楽しそうにゲームキャラの魅力を話す彼女に私達はその事を話せないままでいました。
「そういえば、このお店の新作のデザートが凄く評判いいらしいわよ。月菜さんも杏凛さんも食べるわよね?」
「新作デザート……ですか?」
香津美さんのその言葉に私はドキリとして、思わずお腹の辺りに手を添えました。いえ、ケーキが嫌いなわけじゃないのです。ですが気になっている事があって……
「そう! 新鮮な生クリームたっぷりのマリトッツォ、楽しみよね」
生クリームたっぷり、魅力的なその響きに思わず唾を飲み込みます。杏凛さんも香津美さんにメニューを見せてもらい瞳を輝かせていました。
「ね、月菜さんも注文するわよね?」
「あの、私……」
もちろん私も食べたいんです、だけど今は……!
もう一度お腹に添えた手をギュッと握って、自分に言い聞かせます。この誘惑に負けてしまっては、せっかく立てた計画が無駄になってしまう、と。
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