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私を抱きしめていた柚瑠木さんの腕が少し緩んで、私は彼の背に腕を回しました。私よりずっと広くて逞しい柚瑠木さんの背中をギュッと強く……
柚瑠木さんもまた私を抱きしめる腕に力を入れてくれて、少し苦しいくらいです。
こうして触れ合う事で、今までは曖昧だった関係が少しずつ本当の夫婦へと近づいているような気がするんです。
いつもは私が柚瑠木さんを落ち着かせるためにしているだけの抱擁でした。けれども今回は違う、柚瑠木さんが私の為にこうして抱きしめ合ってくれているんですから。
「困った妻なのに、柚瑠木さんはどうしてこうして優しく抱きしめてくれるんですか?こんな風に抱きしめられて……私が何も思わないと思ってないですよね?」
こんなに優しく抱きしめてくれるのに「好きになるな」なんて言わないで欲しいんです。柚瑠木さんはどうして私にあんな契約を結ばせたのですか?
私はこの気持ちをずっと伝えることも出来ないまま柚瑠木さんの傍にいるしかないのでしょうか?
「……月菜さんは僕を知らなすぎるんです。表面の僕だけしか知らない今の貴女に、僕は何も望めない。」
抱きしめた腕はそのままに、少しだけ冷たい声でそう返されました。確かに私は柚瑠木さんの事を少ししか分かっていません。それならば……
「じゃあ、教えてください!どんな柚瑠木さんだって私は受け入れられますから。」
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