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私はこの時、本気でそう思ってたんです。柚瑠木さんにならどんな話をされても受け入れることが出来る、だから私を信じて欲しいと。
けれど、私を抱きしめていたはずの柚瑠木さんの両腕はそっと私から離されてしまって……
「僕は月菜さんにそんな事望んでいません。これ以上僕の中に踏み込もうとしないでください、夫婦と言っても貴女と僕は契約関係でしかないのですから。」
さっきまで開かれていた扉が突然閉じられたように、柚瑠木さんはまた心を閉ざしてしまいました。
私は彼の心の闇に踏み込みすぎてしまったのでしょうか、柚瑠木さんにはもっと私の事を信じられるだけの時間が必要なのかもしれません。
けれど、ハッキリと柚瑠木さんの口から「契約関係」と言われて、少しも傷付かない訳でもなくて……
「柚瑠木さんがそうとしか思ってなくても、私は違います。貴方が私をそんな風に突き放そうとしても……私は柚瑠木さんとの距離を縮めることを諦められません!」
少し近付いたと思えばすぐに離されてしまうけれど、それでも時々素の表情を見せてくれる。少しだけ本音を話してくれる……そんな柚瑠木さんにもう心を奪われてしまっているんです。
「……月菜さんがこんなに強くなると分かっていたら、僕は妻に選んだりしなかったのに。」
苦しそうにそう言うと、柚瑠木さんは「少し出掛けてきます」と言って、リビングから出ていってしまった。
私は……自分の気持ちばかりを押し付けて、柚瑠木さんを追い詰めてしまったのかもしれません。
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