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契約結婚をしませんか…?
「十条 月菜さんですね。僕の名前は二階堂 柚瑠木と言います。」
そう言って私の前に立ったのは、背がとても高く綺麗な顔をした男性でした。
ええ、お名前だけは知ってます、貴方は今日の私のお見合い相手ですから。
だけど私が何か返事をする前に、彼は数枚の紙を私に差し出してこう言ったのです。
「いきなりですみません、僕と契約結婚をしてくれませんか?」
「契約……ですか?」
確かに私も恋愛結婚が出来るかも何て夢見てはいませんでした。だけど、まさか最初から契約結婚を申し込まれるとも思ってはいなかったのです。
「契約の内容はその紙に書いてある通りです。月菜さんがこの契約に納得していただけるのならば、決して貴女に悪いようにはしませんから。」
「……分かりました。この話、お受けします。」
柚瑠木さんは冗談や嘘をついているようには見えなくて、私は契約内容をよく読まずに彼に返事をしたのです。
この見合いを断ったとしても、私は決められた結婚しか出来ないのです。それならこの人に尽くしてみようと、そう思ったんです。
もしかしたら彼の暖かさを少しも感じさせない氷の様に冷たい瞳に、魅了されたのかもしれません。
「では、これで契約成立という事で。」
それだけを言うと柚瑠木さんは、振り返ることも無く帰って行ったのでした――――
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