君に声が届くなら

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勝手にボクの部屋に上がりこんで、昔からの定位置に座る。翔太はベッドに、莉子は大きなビーズクッションへ。 『どーした?』 小さなホワイトボードに走り書きをして差し出すと、 「莉子とドライブ行ってきた。土産」 「今度は隼人も行こうね」 『運転、上手なった?』 道の駅の名前が書かれた白い袋を受け取る。三人揃って教習所へ通って、免許を取った最初の頃はよくドライブにも行った。 「イルミネーション、きれいだったよ」 スマホのカメラロールを見せながら、二人は昔と変わらない速さで話をする。耳は正常だから、聞き逃すことはない。聞くだけで楽しめた会話が、時々辛くなって最近はドライブも断っていた。 「隼人、新しいの描いたの?」 『ずっと家に居るから。暇つぶしに』 時間つぶしに描いたデザイン画のスケッチブックをめくりながら、莉子は翔太の隣へ自然と移る。 付き合っているんじゃないかと思うくらい、二人の距離は近い。ボクのいないところで、そういう関係になっていても、不思議はない。 そんな二人を見ていると、純粋に、いいなぁと思う。幼馴染でも会話を成立させるのに苦労するのに、事情を知らない他人と深い仲になれるはずがない。机を指でノックすると二人が顔を上げた。 『翔太にお願いがある』 「おん。いつもの?」 ボクが頷くと、莉子はまたクッションへ戻っていく。
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