甘い唾液 3

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甘い唾液 3

* いやいや・・・本当にこれでいいのか? オレはインターネットの情報のままに、板チョコを溶かして型に入れるという作業をしていた。 ただチョコ専用の型がどこに売ってるのかわからなかったので、家にあった製氷皿を使ってる。 これがオレの限界。 チョコを溶かす過程は、全く料理ができないオレでもできるくらい簡単だった。 鍋にチョコと水入れて火にかけるかと思ってたら、全然違ったことには驚いたけど。湯煎(ゆせん)なんて言葉初めて聞いた・・・。 逆に騙(だま)されていないかと不安になる。 とりあえず合ってるみたいだけど・・・本当にいいのか? オレは一人キッチンに立って首を傾(かし)げた。 今日はオレは夕方から休みで、逆に珀英がライブでいないという、一人の時間が取れる日だったので。 だったらライブに行ってあげればいいのにって自分でも思うけど、本当は観たいけど、珀英に気づかれずにチョコの準備できるのが今日しかなかったから。 珀英には予定があるって嘘ついてしまった。 バレンタインまではまだ1週間以上あるけど、休みで一人になれるのが今日しかなかったので、強行決行だ。 オレは近所のコンビニに寄り、綺麗に作られたちゃんとしたバレンタイン用のチョコを無視して、板チョコを数枚買って、家に帰るとネットで調べて、バレンタインのチョコを作っていたのだが。 本当に溶かして型に入れるだけで・・・騙されているんじゃないかと不安になっていた。 もっとも、他にもケーキとかクッキーとかの凝ったレシピがあったから、世の女性はそういうの作ってるんだろうけど。 オレには無理だから最初から眼中にない。 オレは型に入れたチョコを冷蔵庫に入れて扉を閉めた。 あとは固まったら型から外して、袋とかに入れればいいだけ。 本当にこれでいいのか?まあ・・・オレでも簡単にできたからいっか。 一安心したところに、視界の端にキッチンに転がる食器なんかが、ちらりと入ってくる。 後片付けが面倒くさい・・・けど、仕方ない。 オレはチョコまみれのボールなんかを洗って、水切りカゴに入れる。 何とか全部洗い終えて、ふと時計を見ると、時刻が21時を回っていることに気がついた。 夕飯食べてない・・・。 今日は珀英がいないから一人で食べなきゃ。 今日の夕飯は、珀英が作り置きしていったホワイトシチューと生ハムと野菜のマリネを食べて・・・このメニューは白ワインに合うな。 白ワインあったっけ? 明日起きたらキッシュ温めて、パン焼いて食べるように言われてたっけ・・・ちゃんと食べないとアイツうるさいんだよな・・・。 そんなことをぼんやり考えながら、冷蔵庫からシチューの入ったタッパーを取り出した。
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