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「ひぐれ」は「オダマキ」など気にも留めず、鼻歌交じりに夕暮れの空を飛んだ。ほんの20分前にバス停から見た「たまご」たちの群れを構成するひとりになれたことが、嬉しくてならなかった。
ふと、今晩はこのまま家に帰れるのだと思った。
「行きはバスで、帰りはほうき。いいじゃん、いいじゃーん! サイコー!!」
「まったく…」
ちいさなウサギのぬいぐるみは、肩掛けカバンからひょっこりと顔を覗かせ、ぼやき続けた。
魔女たちは境界に住まう。
生と死、男と女、昼と夜。人と、人ならざる者。はっきりと区切りがあるようで、その実ひどく曖昧なその場所に、魔女たちは存在する。
この街の空には、魔女の「たまご」たちが飛ぶ。この街の海岸線ぎりぎりまで山肌がせりだし、その狭間には、あらゆるものが同居する。
「あちら」と「こちら」と、その狭間。藍と橙がまじりあう、昼と夜との曖昧な境目を、今日も「たまご」たちは飛んでいる。
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