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「私にも、涙が流せるといいのですが……」
「えっ?」
「マスターの目からこぼれ落ちた涙は、とても綺麗でした。私にも、あんな風に綺麗な涙が落とせればいいのにと、そう思いました」
「なぜ?」
私がそう問いかけると、SHINは困ったように言った。
「分かりません。ですが、マスターが亡くなった時に同じように出来ればと……。そう思いました」
「SHIN……」
もしかしたら、SHINの中に感情が芽生え始めているのかもしれない……。そう思ったが、自分の都合の良いように解釈しているだけかもしれないと、そう思い直した。
「さてと、今日は新しい実験をやるんだったわね」
私は気持ちを切り替えようと立ち上がり、実験室の方へと歩き出す。すると、SHINはそんな私の後ろから言葉をかけた。
「マスター。マスターは、私が壊れた時に涙を流して下さいますか?」
「えっ?」
「私にも、あの綺麗な落とし物を……落として下さいますか?」
──Fin.
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