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俺の住む世界では存在感と言う物が、誰からも得られなくなると消えてしまうらしい。
この世界で言う存在感とは、居ると証明できているかというもの。
例えば、学校の行事に参加でどんな結果であろうと記憶に残る事ができたか。
例えば、仕事で称えられる程の、大きく利益に繋がる結果が出せたか。
とにかく、誰かの記憶に強く残す事が出来ればいい。それが自分が生きる理由になる。
だが、当然逆もある。
話を聞く限りでは、存在感が得られなかった人達は誰の記憶にも、形として思い出にも残らず消えて行ってしまうらしい。そして、自分ではそれを認知できない。
もしかしたら、記憶に残らないだけで俺の友達や、昔の同級生もすでに消えてしまっているかもしれない。
だが、抗えない。
それが、病気ではなく『そう言うモノ』であると言われているのは義務教育で十二分に教えられた。だから、皆大きな行動に出るのだ。
それが失敗しようが、成功しようが、生きて存在感を出すために。
ところが、俺の親友は消えたがっていた。
「死ぬのと同じなんだぞ?」
俺はそう聞いたが、あいつは言う。
「そこまでして自分を知ってもらわなければ生きていけないだなんて、拷問とどう違うんだ?そこまで生きることに執着する必要はあるのか?僕はそう思わない」
そうは言うが、消させる訳にはいかない。
俺の唯一の親友をそんな理由で存在感を無くすわけにはいかない。
今日も、あいつを消させない為に、連絡を入れる。
あいつは、俺がいないと生きていけないのだ。
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