『いい日旅立ち、西へ』

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抱きしめていた腕を解いて 健ちゃんは玄関を開けて外へ。 宅配便だったらしく、箱を抱えて戻り またドアを閉めた。 「実家からやったわ」 箱をまた廊下に置いて。 宅配便の絶妙なタイミングに 甘い雰囲気はすっかり吹き飛んだ私達は マンションを出て、また来た道を戻った。 . 「あれ、川上? 」 ふざけながら歩いてたら 本社近くで呼び止められた。 「おう、悪いな。先上がらせてもらって」 一緒に仕事してる、同じ会社の人だと分かった。 その人は私に目をやって 「東京本社の噂の彼女や! 」 思い切り指をさされた。 「……噂? 」 「めっちゃモテモテやのに、東京に彼女おるからって。 川上の決め台詞な」 「あー……もうええって。行こ」 健ちゃんは"テレてます"って顔で歩き出すから、 私は慌ててその人に軽く頭を下げた。 「癒してやってな、めっちゃ気張ってやってたから」 「……ハイ」 癒やしてやって、なんて初めて言われたし それに"ハイ"なんて答えた私に少し照れつつも こっちでも 健ちゃんは良い人に囲まれてるみたい、なんてちょっと嬉しくなって 先を行く健ちゃんを追いかけ 腕にしがみついた。
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