362人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
抱きしめていた腕を解いて
健ちゃんは玄関を開けて外へ。
宅配便だったらしく、箱を抱えて戻り
またドアを閉めた。
「実家からやったわ」
箱をまた廊下に置いて。
宅配便の絶妙なタイミングに
甘い雰囲気はすっかり吹き飛んだ私達は
マンションを出て、また来た道を戻った。
.
「あれ、川上? 」
ふざけながら歩いてたら
本社近くで呼び止められた。
「おう、悪いな。先上がらせてもらって」
一緒に仕事してる、同じ会社の人だと分かった。
その人は私に目をやって
「東京本社の噂の彼女や! 」
思い切り指をさされた。
「……噂? 」
「めっちゃモテモテやのに、東京に彼女おるからって。
川上の決め台詞な」
「あー……もうええって。行こ」
健ちゃんは"テレてます"って顔で歩き出すから、
私は慌ててその人に軽く頭を下げた。
「癒してやってな、めっちゃ気張ってやってたから」
「……ハイ」
癒やしてやって、なんて初めて言われたし
それに"ハイ"なんて答えた私に少し照れつつも
こっちでも
健ちゃんは良い人に囲まれてるみたい、なんてちょっと嬉しくなって
先を行く健ちゃんを追いかけ
腕にしがみついた。
最初のコメントを投稿しよう!