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当時、私には、2年ほど付き合ってる彼がいた。
同じ大学の同級生で、その春、それぞれ違う会社に就職した。
そういうタイミングだったんだと思う。
初めての仕事にうまくリズムを掴めなくて、お互いにイライラしてた。
週末、一緒にいても、楽しくない。
でも、家では楽しかった。
「ねぇ、みっちゃん、サークルなんだけどさぁ……」
「みっちゃん、あの教授の講義さぁ……」
同じ大学ということもあり、琉偉くんは屈託なく私に相談してくる。
私は、いつしか、彼といるより琉偉くんといる方が、安らぎを感じるようになっていた。
そんな梅雨明け直後の晴れ渡ったある日、琉偉くんに相談された。
「みっちゃん、俺、サークルの子に告白されたんだけど、どうしよう」
えっ?
私の胸の中がざわめいた。
「いい子だとは思うんだけど、別に好きってわけでもなくて……
やっぱり、断った方がいいよね?」
付き合って欲しくない。
そう思ってる私が、確かにいる。
だけど、そんなこと、琉偉くんには言えない。
だから、私は、お姉さんぶって助言する。
「いい子だと思うなら、付き合ってみれば?
付き合い始めてから好きになるかもしれないし」
それを聞いた琉偉くんは、私をじっと見た後、
「うん、そうだよね。そうする」
と、部屋に戻っていった。
あれ、なんだったんだろう。
最後、何か、言いたそうだったのに……
琉偉くんの相談は、私の中に、ざわざわの種を落とした。
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